INDEPENDENT:NGY、ゆめみトランク作品「糸子」、無事に終演いたしました。
ご来場いただいた皆様、本当にありがとうございました。
また、ご都合でご来場いただけなかった皆様も、情報の拡散や、応援メッセージをいただき、ありがとうございました。
「糸子」は、「赤」というテーマの下、脚本家の鏡味さん、美術の秦さんと一緒に話し合いながら作り上げました。
「赤」は、いろんな意味を持ち、特に女性にとっては特別な色です。「命」の色、と言えるかもしれません。その「赤」に、命、愛、祈り、希望、絆という意味を込めた作品が、今回の「糸子」でした。
観ていただいた方の心に、何かジーンと残るものがあったのなら、とてもうれしいです。
それぞれ、みなさんの中にストーリーや受け止め方があるでしょう。また、よくわからなかった、という方もいらっしゃると思います。
ここで、改めてストーリー、というか、こんな思いを込めていました、というお話を。
【STORY】
倒れた花瓶。
それは生まれてきた意味や生きる意味を否定し、拒否するかのような彼女の姿。
交差点で人の波に突き倒されたまま誰にも気に留められず、孤独を改めて受け入れようとしたとき、突然交差点の向こうに現れた少女。
無邪気に彼女と戯れようとしてくる少女は、まさに昔の自分。
いつから、彼女は「倒れた花瓶」となってしまったのだろう。
彼女は自分の名前が嫌いだった。「糸子」。古臭いから?意味不明だから?
そうではなく、「母親」が名付けた名前だったから。
彼女は「母親」が憎かった。美しく、軽やかで、突然自分の目の前から消えた「母親」。
自分は捨てられた。それが、彼女が孤独を受け入れなければ生きていけない過去だった。
また少女の声がした。幼く、生まれたばかりの声。
声は赤い繭玉となって、自分の体内から。心のどこかから、語りかけてくる。
声は、自分は「お花屋さん」だという。
そして、帰ってこない母親のことが大好きだという。
糸子には信じられなかった。人は生まれるのも一人、死ぬのも一人。裏切りや絶望を受けいれれば、孤独でも生きていけると、そうしなければ生きていけないと、まだ信じていた。
繭玉はゆっくりと、糸子の目の前で自らをほどき、「みんな、すき」だと言った。
「おはなやさんだから、さみしくない」と。
徐々に繭玉からほどかれた糸は、人と人、時間と時間、出来事と出来事をつないでいく。
それは人の営み。
命は繋がっている。すべての出来事は、偶然ではない。
糸子は紡がれた糸を見た。そして、思わず口にした。
「おはなやさん、一本、いただこうかしら」
糸子は予感がした。
繭玉からほどかれた糸の先に、あの母の姿があった。
母から受け継いだ命、その母を産んだ命、やがて自分が繋ぐ命。そのすべてが、糸子をやさしく包む。
倒れた花瓶は、やがて自分が存在する意味を見出そうとしていた。
赤い花が、糸子の心に宿った瞬間だった。
この作品は、評論家の方からも一定の評価をいただくことができました。
再演する機会があれば、さらによい作品としてみなさまにお届けしたいと思っています。
「糸子」