3月20日、岩手県釜石市鵜住居(うのすまい)地区での上演後、2年生くらいの女の子のお孫さんを連れたおばあさんがプレゼントしてくださった、手作りのふくろう。
中に鈴が入っていて、かわいらしい音がします。

「震災後、孫がはじめて笑ってくれた」

女の子のお母さんは、津波で亡くなったそうです。
おばあさんは、涙をこらえながら、笑顔でお話してくださいました。
女の子は、少し恥ずかしそうにおばあさんの後ろに隠れていました。

震災発生からちょうど1年、テレビなどで津波の映像が流れ、公演の数日前に発生した地震で、津波警報のサイレンが1時間以上も鳴り続けたために、子どもたちの心は動揺し、大人たちも不安に駆られている、という状況でした。

子どもたちの中には、開演前、上演中もなかなか落ち着くことができず、みんなが真剣な空気になるほどに、物を投げたり、立ち上がったりする子も。

でも、その小学生くらいの女の子をはじめ、大人のみなさん、おじいさん、おばあさん方は、食い入るように観てくださっていました。

2stめ、鵜住居の第2仮設住宅にある、デイケアセンターでの上演。

そこに通っていらっしゃるお年寄りのみなさん、20名ほどに観ていただきました。

若い役者の熱演を温かい目で見守ってくださるような雰囲気と、ほっこりとした笑い声と、最後に、涙。

スタッフの方も、
「子どもたちの笑顔やお母さん方、お年寄りの涙が強烈に印象に残りました」

と言ってくださいました。

かたづけをしていると、いちばん前の列でみていたおばあさんが、施設の職員の方に付き添われて私のところにやってきて、手作りのレーズンのケーキをくださいました。

職員の方といっしょに、
「これしかあげられるものがないんだけど」

と言って。

今朝、それをいただきました。
甘くて、おいしかったです。

おなかいっぱいになりました。

釜石のみなさんに、たくさんのものをいただいた公演でした。
舞台の持つ力を、改めて感じ、深く心に残る経験でした。

この公演をコーディネートしてくださったスタッフのみなさん、
受け入れてくださった釜石のみなさん、

本当に、ありがとうございました。